そらの、いろ。

「あなた」が見ているのは、青く染まった空か、薄暗く濁った空か。  「ひきこもり」となった家族と、同じ屋根の下で暮らすその家族の、これまで、今、これから。

日常。

朝。7時頃に目を覚ますと、トイレを済ませて自室に入る。
それから正午近くまではトイレ以外では一切自室を出ない。
正午近くになると、彼はその日の食料などを確保しに、自室を出て
台所に向かう。
食料を確保したあとは自室に戻り、夕飯・入浴のタイミング以外は
自室から出ない。
―と、夜。寝る時だけは何故か母親の過ごす部屋に入ってきて、そこで寝る。
(我が家は三部屋あって、母の過ごす部屋が、兼茶の間、兼寝床にもなっている)


部屋の電気は一切付けない。
窓は一切開けない。おそらく開けていない。なので部屋の中に悪臭がこもる。
ごみは、ある程度までたまらないと捨てないので、その匂いもあるだろう。
隙を見て部屋の中をのぞき見てみると、
結ばれたごみ袋が部屋の端に積まれている事がある。
他人(家族)の誰とも、一切顔(目)を合わせない。やりとりしない。
(母親が、夕飯なりほかの何かのタイミングなどでメールを送っている。
反応は返ってこない)
一度、たまたまトイレへの出入りですれ違いかけたときは、
ものすごい舌打ちとともに、これまたものすごい勢いで顔をそむけて
自室へと戻っていった。
自室には、漫画や小説、ゲーム、テレビ等、娯楽はある。
(ただし、最新のものでも、ひきこもるようになった年以前のものしかない)
デスクトップPCもあったけれど、壊れたのかしら。どこかにしまわれたらしい。
携帯(スマホ)は持たせている。なので、
一応間接的なやりとりは可能ではある。(やりとりするとはいっていない)
最新の娯楽等は、これがあるのでまあ問題はないって事かしら。
新しく、何かを買ったりとかは基本出来ない。
働いていないでの収入はない。当たり前なんだけれど。


―これが、彼の“今”。この状態は、さて、どんなものなんだろうか。
今日、全国でうん十万人にもなるって聞く「ひきこもり」の人たち。
年齢や、そうなってしまった背景事情とか、みんなそれぞれだと思うんだけれど。
その人達と、彼と。何かが似ていて何が違って、それがマシだとかその逆だとか、
いや、比べるという話ではないんだけれど。
それでも。どうなんだろう。
他の、ひきこもり状態の人達。またはそのご家族。
こんなふうに、ネット(ブログ)などででも、その想いとかを
綴っていらっしゃって。
彼が引きこもってしまってから。
僕は、いくらかそういったものをのぞかせていただいたりするようになった。
本当に、何かを比べたりとか、そういった事じゃないんだけれど。


ちなみに、先に記したそれは、ここ半年程度の様子。
僕と母親は、“マシになった”と思っている。
何がマシかというのは、“今”より状態がひどかった時に比べて。
まず、トイレ以外は本当に自室からは出なかった。
隣家にきこえるかと思うほどの大きさでがなる。少なくとも窓の外には聞こえてた。
最もひどい時は、3時間以上もずっと、休まず、がなり続けていた。
ク○、○ねをはじめとした暴言の嵐。息をするかわりといわんばりに舌打ち。
部屋内で暴れる。壁殴って穴開けたり、物投げつけたり、激しい地団駄。
この状態は4、5年くらいあったのかな。
今はそれらはほぼ無い状態。
あって、たまに、がなるくらい。以前に比べればぜんぜん。舌打ちも相当減った。


引きこもるようになって、約7年。
そりゃ、彼の中にいろいろとあるよな。あったろうな。
考えてたろうな。悩んでいたろうな。苦しんだのだろうな。
それゆえの、であったのだろうな。
今も、何かを考えて、悩んで、苦しんでいるのだろうな。
これからも、何かを考えて、悩んで、苦しむのだろうな。
その。「何か」がなにか。僕達にはわからなくて。
わかりたいけれども、力になってやれないかと思うけれども。
どうすればいいのか。どうすることもできないで。
僕達も、考えて、悩んで、苦しんで。



『なにもしていないのに疲れる。考えるのに疲れた。考えがまとまらない。
考えたくない。動けない。動きたくない。人も外も嫌だ。でも』